忘れられないロケの味<53日目>
テレビカメラマンを生業にしています。
20年も仕事をしていると、忘れたくても忘れられないロケがあります。
しんどいロケです。
自分で選んだ「しんどかったロケベスト3」をご紹介します。
ロケで登ったのは、おそらく8年前です。
石鎚山は日本七霊山の一つにも数えられる信仰の山として知られています。
標高1982mでおそらく山頂までは歩いて約2、3時間くらいで登頂できます。
そんな石鎚山の何が一番大変だったかというと、それは登るときの山の角度です。
写真の線をみていただけるとわかりますが、ニノ鎖を超えてからの角度がかなり急なのが伝わります。
テレビ番組の視聴率で例えると、まるで『101回目のプロポーズ』です。(チャゲアスの曲がかかり始めるラスト5分の盛り上がり)
数時間登ってきて体力を消耗されてからのラスト数百メートルがかなりしんどいんです。
そう、この鉄の階段。
角度が急すぎるから階段を設置しているんです。
この階段が
まあ〜しんどい!!!!!
もう少しで心臓と肺がパンクする寸前でした。
なんとか山頂までたどり着きましたが、あいにくの霧で景色はあまり良く見えませんでした。
最悪ですね。
僕はこの時から「山登りは距離じゃなくて角度だ」という事を知りました。
第2位 中国・華山ロケ
最高峰は2154m、五名山の一つでこちらも山ロケなんですが、
しんどかったのは距離や角度ではなく気温でした。
場所は西安から車で2時間。
水墨画のような絶景を撮影するという目的で登頂しました。
季節は2月。
写真が残ってました。こんな感じ
あんまり寒さは伝わらないですよね。
気温は-20℃
鼻で呼吸すると鼻毛が凍ります。
外気に触れている肌が痛いです。
山の中腹に石でできた小屋があってそこを拠点にしていました。
山の天気が崩れるとかなり危険なので、吹雪が近づくと撮影は中止してそれぞれ部屋で待機します。
この部屋での待機が
まあ〜寒い!!!!!
建物に暖房器具は一切ありませんでした。
石の壁から伝わる冷気が部屋全体を包みます。
夜寝るときはあまりにも寒いので、帽子も服も靴も全て着用したまま布団にくるまってジッと耐えています。
こんな感じ
1時間くらいすると体温で布団の中が暖かくなってきます。
そこからやっと寝れる状態になります。
猛吹雪のため、丸一日部屋にこもりっきりの日がありました。
食事の時以外は寒さで布団の中から一歩も動けません。
ただ時間が過ぎるのを待つのみです。
生き地獄でした。
2005年阪神タイガースがリーグ優勝した年です。
阪神が優勝した次の日の初日の出を日本最東端の北海道・納沙布岬で拝むという企画。
松竹芸能の代走みつくにさんが兵庫県の甲子園から納沙布岬までママチャリだけで縦断する姿をロケ車で追いながら撮影しました。
この説明だけで十分大変そうなんですが、ロケの中で一番しんどかったことが不眠不休です。
おそらく阪神タイガース優勝までM5くらいのタイミングでロケが甲子園からスタートしました。
スタッフはディレクター、カメラマン、アシスタント2名の計4人。
当時アシスタントだった僕の仕事は音声と車の運転です。
もう一人とそれを交代しながらロケをします。
まず甲子園から京都の舞鶴まで自転車で行き、そこからフェリーで丸1日かけて小樽に向かいます。
道のりは小樽ー札幌ー帯広ー釧路ー根室だったと思います。
約500kmです。
優勝した翌日に間に合わないと企画が成立しないので、とにかくずっと代走みつくにさんはママチャリを漕いでいました。
僕達も一生懸命撮影していましたが
まあ〜眠い!!!!!
不眠不休が丸3日間続きましたzzzz
僕も我慢強い方なんですが眠気が一番辛いですね。
ちなみに代走みつくにさんは無事に日の出を見ることができました。
身も心もボロボロでしたけど・・・。
第2位 中国・華山ロケ
以上「しんどかったロケベスト3」でした。
しんどい自慢がしたかったわけでもなく、テレビがブラックな業界と言いたいわけでもありません。
ただ辛いだけじゃなく、そこには達成感や仲間との連帯感も生まれるし、仕事のやりがいにもつながります。
しんどいロケも時間が経てば笑い話。
辛い経験がいい思い出になるんです。
くれぐれも僕がしんどいロケに行きたいと言っているわけじゃないので、ディレクターのみなさんお間違えないように!!!!
楽で楽しいロケの発注待ってます〜。
ご精読ありがとうございました。