横垣哲也のミソ知る

時代に乗り遅れたテレビカメラマンがブログを始めました。

本当に伝えたい言葉は伝えられない<96日目>

 ブログの反省をしていました。

なんとなくなのですが、今のこの状態のままで100日目に突入するのが嫌だったのかもしれません。

<R-25>、<R-26>、<R-27>を更新したので良かったら読んでやってください。

くれぐれも自分のブログに対するただの反省文なのでご理解ください。

反省ばかりの日々に少し飽きてきたので、今回はこっちに戻りましたが、また寄り道をするつもりです。

 

yokocamera.hatenablog.com

 

どんな字を書くかで人の印象はだいぶ変わります。「文字は人なり」というが言葉があるように、文字はその人が持つ性格や教養を表します。

使う言葉や書く文字一つ一つが、その人の人柄を表しているのかもしれません。

 

 とあるADくんが書いたメモを目にすることがありました。僕はそれを見て大変驚きました。

彼が書く字が、とてもユニークな字なのです。

おそらくメモで何か伝言をしたかったのでしょうけど、残念ながら字がユニークすぎて解読することができませんでした。

目をつぶって書いてもあそこまでユニークには書けません。

 

 どんなに字がユニークでもメールなら関係ありません。 

かくいう僕もユニークな字を書きます。左利きなので書き順もバラバラです。

出来ることなら全てメールがいいのですが、手書きの良さもあるので、そういう時はできるだけ丁寧に書こうと心がけています。

 

 はたして、ADくんは自分がユニークな字を書いていることを自覚しているのでしょうか?

 

今度会ったら聞いて見ることにしよう。

しかし、それは叶わないかもしれません。

どうやらADくんはもうすぐ今の職場を辞めるみたいなんです。

 

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 荷物を両手いっぱいに持って仕事をしていました。

財布の中身はいつも領収書でパンパンでした。

でも電話に出るのは妙に早かったです。

 

 テレビ局内で僕を見かけると走って近づいてきて、わざわざ僕に挨拶をしてくれます。

半分ネタにもなっていましたが、僕を見かけるたびに毎回走ってくるんです。

別に何か話すわけじゃありません。ただ挨拶するだけなんです。

僕はそんなADくんのことが嫌いじゃありませんでした。

 

 ある日、ADくんがいつものように走って挨拶をしに来たのですが、今日はどうやら様子が変です。

 

「報告がありまして…」

「どーしたん?」

「職場を辞めることになりました」

その時はお互い別の仕事中だったので『今このタイミングでそれ言うんか〜い!』ってなりましたが、とりあえず後でメールするわと伝えてその場は別れました。

 

 

 時間を改めて僕はメールでADくんに詳しく話を聞きました。

「次に行くあてはあるの?」

「あてはないです」

あてもなく職場を辞める。何かトラブルでも起こしたのだろうか?

 

 

「クビってこと?」

「いえ、自分からの撤退になります」

「自分から辞めますって言ったってこと?」

「少し前から仕事がツライと思っていて、職場に相談してそれが叶った形ですね。まぁ、色々なディレクターのもとで失敗して、信用も仕事も無くなりました」

本当に素直な奴だ。ADくんなりに色々思うところはあるらしい。

まあ仕事にも向き不向きはあると思う。まだまだ若いからやり直すことはいくらでもできる。

 彼にぴったりの職場は絶対にある。

 

 

「やりたいことや興味があることはあるの?」

「色々な人に相談して、別の制作会社に入ろうと思っています」

 !!!!!!?。

予想外の返信。どうやらまだ制作の仕事がしたいらしい。

 

 

「テレビの仕事がしたいの?」

「当てはないですが、テレビ制作の仕事がしたいです」

 …自分の気持ちをハッキリ言えることは素晴らしい。しかしなぜテレビの仕事がしたいのかがわからない。

ADくんはこう続けます。

 

「僕はこの業界に向いています。中学生の頃からこの業界しか目指していなかったので、他の業界を知りません。ここで諦めるのはもったいないと思いました」

確かに諦めたらもったいないかもしれません。

テレビの仕事がしたいならするべきです。

 

僕は返す言葉に迷いました。

この話は職場を辞める報告なんです。僕の助言なんて1mmも求めていません。

 

 

「何か聞きたいことある?」

「短い間でしたが一緒にロケに行けて楽しかったです。もし、ディレクターになれたらカメラマンでお願いします」

  頭の中ではたくさんの言葉で溢れているのに、どの言葉を選んでみてもしっくりくる言葉が見当たりません。 

 

 

「腕を磨いて待っています」

僕がADくんにメールを送るとすぐに返信がありました。

 

 

「ボクもディレクターになれるように頑張ります。人を楽しませるVTRを作って、人を笑顔にします」

最後に送られてきたADくんのメールは、ユニークでとっても読みやすかったです。

 

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 後日、テレビ局の前であくびをしながら歩いているADくんを見かけました。

その時は僕に気づいていませんでした。

もうすぐ職場を離れるというのに相変わらずな感じです。 

 

僕は遠くへ歩いていくADくんの後ろ姿を見ながら、『今度一緒に仕事するまでには、もっと字がキレイに書けるようになろう』と心に決めました。

 

 

 

【大きな声でヒトリゴト

本当に伝えたい言葉は、伝えなくていい。

 

 

 

ご精読ありがとうございます。