このブログを本格的に始めるまでをSNSをやったことがありませんでした。決して食わず嫌いではありません。興味がなかったわけでもありません。どういう風に利用したらいいのかがわからなかっただけです。
僕のInstagramをご覧になったことはありますでしょうか?スマホで撮った画像はすべてモノクロに加工してアップしています。懐古的な感じが好きなんです。もちろん色彩があった方が鮮やかでしょうし、インスタ映えもすることでしょう。
物語の主人公は写真家の伊東俊介さん。先日、朝日放送『LIFE〜夢のカタチ〜』という番組で製作現場を取材させて頂きました。
伊東さんは日本各地のギャラリー・カフェ・雑貨店など様々な場所で出張撮影会をしています。この活動は10年以上続いており、これまでたくさん人を写真に収められてきました。
彼の活動で一番特徴的なのは、フィルムカメラで撮影をしていることです。しかも写真はモノクロで仕上げています。
動画と違って写真は一瞬の表情をカメラに収めなくてはいけません。フィルムなので連写機能もなければ、撮った画像をその場でチェックもできません。その一瞬を大切に残したいという気持ちが、フィルムをより魅力的に感じさせてくれるのでしょう。
現像とプリントは「studio5」の現像技師・勢井正一さんという方が全て手作業で行います。今回は伊東さんにスポットを当てて取材をさせて頂いていましたが、勢井さんもすごい技術をお持ちなんです。モノクロを専門にこの道40年の勢井さんは、光を巧みに操って写真を一枚一枚丁寧に仕上げていきます。
勘違いされやすいのですが、現像って写真をプリントすることじゃないんです。わかりやすくいうと写真の原本を作る作業のことをいいます。ここでの仕上がり方で写真の良し悪しが決まります。
このお二人の素晴らしい技術は、一枚のモノクロ写真に形を変えてお客さんに届けられています。
『いきますよ〜。はい、チ〜ズ』なんて掛け声はしません。
人はカメラの前に立つとつい表情が硬くなってしまいます。なので伊東さんは終始、変な音を出したり、面白い顔をしてお客さんの緊張をほぐします。
実は僕もお客さんとして写真を撮ってもらいました。撮影場所は奈良県宇陀市にある築300年の古民家を改装したギャラリーです。その日はあいにくの雨模様でしたが、それはそれで味わい深いものです。濡れないように屋根のある縁側の下で撮影することになりました。
髪型も服装も普段のまんまです。よそ行きの格好ではなく普段通りの姿で残すことを伊東さんはおすすめしています。写真撮影をもっと身近な存在にしたいという想いも込められているのかもしれません。
僕はカメラマンなので撮るのは嫌いじゃないですが、撮られるのはあまり得意ではありません。撮影時間は30分くらいでしょうか。常にコミュニケーションをとりながらリラックスさせてくれたので、あっという間に撮影は終わりました。
伊東さんの前だとどういう訳か自然な表情になるんです。スタッフのみなさんも「伊東さんは笑顔を引き出す天才だ」とおっしゃっていました。
きっとあの眼鏡とチョビヒゲに何か秘密があるんじゃないかと僕は踏んでいます。
撮った写真の中から、どの一枚にするかは伊東さんがじっくり選びます。楽しそうに作業されているのがとても印象的でした。
お客さんの中には自分で写真を選びたいという方もいらっしゃるかもしれませんが、どんな写真が手元に届くのかワクワクしながら待つのも演出の一つです。
伊東さんが選ぶ写真にはストーリーがあります。かしこまった表情の写真はあまり選びません。それよりはもう少し自然に近い表情だったり、空気感だったり、、。写真を見ながら誰かと一緒に会話をしたくなるような、そんな写真を選んでいるように見えました。
白黒だから足りない情報は、お互いの記憶を会話をしながら埋めていく。モノクロの世界は人と人との距離を近くしてくれるのかもしれません。
この先、いとう写真とは長いお付き合いになりそうです。10年後の僕は一体どんなオジサンになって写真に写っているんでしょうか。そして10年後の僕は今の写真を見てどう振り返ってくれるのでしょうか。伊東さんが撮ってくれる写真は、これから僕の人生に彩りを与えてくれます。
ご精読ありがとうございました。
#いとう写真館#studio5#ギャラリー童夢