前回のつづきですが、
毎日放送『ちちんぷいぷい』というお昼の情報ワイド生番組に長年お世話になっています。長寿番組なんで関西で生活している人はよくご存知でしょう。
その番組内で「昨夜のシンデレラ」というコーナーがありました。
夜の飲み屋街でインタビューするだけの内容です。「シンデレラ」と言っていますが、インタビュー対象は女性ではなく、むしろ「酔っ払いのおっちゃん」がほとんどです。
夜20時。
僕はカメラを持ってディレクターと2人で夜の街に出動します。特に打ち合わせすることは何もありません。
「今日はどこ行きましょうかね?」
行く場所もディレクターによってが好みがあるのですが、だいたい梅田・天満・十三・京橋・難波あたりが多かったです。
現場に到着すると撮影スタート!と言いたいところですが、酔っ払いのおっちゃんと出会わなければと何も始まりません。
ここでもディレクターによっての違いがあるのですが、
人通りの多く見通しがいい所でじっくり粘る「静」タイプと、
ブラブラ街を徘徊しながら探す「動」タイプがいます。
ちなみに僕はどちらかと言うと、動いて探す方が好きでした。
行き交う人や街並みをずっと見ていると、その街の雰囲気がだんだんがわかってきます。
VTRの尺は約4分。オンエアできるのは1組だけです。
酔っ払っていたら誰でも良いわけではありません。楽しく飲んでいる人じゃないとインタビューしていても会話が弾みません。
いい感じの酔っ払っている方を探す時のポイントがあります。
・とにかく声の大きい人。
・服装がお洒落な人。
・仲間と肩を組んで歩いている人。
見た目や第一印象で、ある程度どういう感じの方かを瞬間的に判断します。
いい感じの人がいれば声をかけますが、なかなかそういう人に出会わない日もあります。
そんな時はただひたすら、いい人に出会えるのを待ちます。
昨夜のシンデレラにはゴールデンタイムがあります。
22:00〜23:30。「人が動く時間帯」です。
もう一軒ハシゴしたり、家が遠い人はぼちぼち帰宅し始めたりします。
この時間になると我々も仕事のギアをセカンドからサードに切り替えます。
しばらくすると向こうから、いい感じに酔っ払ったサラリーマンが近づいてきます。
ディレクターとアイコンタクトで狙いを定めて一度、目の前でやり過ごします。そして改めてついていき後ろから声をかけます。
「こんばんは〜今日はどんなお酒でしたか?」
ディレクターが質問します。
「いや〜今日は楽しいお酒やったよ〜」
この第一声で全てが決まります。何度も酔っ払いにインタビューしていると一言会話するだけでオンエアされる人か、そうでない人がわかります。
いきなりカメラを向けられると誰でも意識してしまうもんです。カメラを意識してしまうと自然なインタビューが出来なくなります。
その点、いい感じで酔っぱらっているとカメラの事なんかどーでもよくなって、いっぱい自分の話をしてくれます。1質問したら10返ってくるんです。
あとはその人が何歳で、どんな仕事をしていて、どんな家族構成で、そして今日何杯くらい飲んだのか?どんな話で盛り上がったのか?を聞いていきます。そして最後に改めて「今日のお酒はどうでした?」と聞いて、一言頂いたらそのままお別れします。
見えなくなるまで後ろ姿を撮影して終了です。
大体はこの時間帯でインタビューして帰れるのですが、ここで出会えないと状況は一変して厳しくなります。
23:30
みんな終電に間に合わなくなるので急ぎ足になり、ゆっくりインタビューをしている時間が無くなります。
こういう時、経験の浅いディレクターだとテンパってしまうんです。時間の無い中、せっかく足を止めて話をしてくれていても焦ってしまい、あまり内容のない会話で終わってしまいます。
僕は「昨夜のシンデレラ」を数年携わってきて確信していることがあります。
どんな場所でも、どんなに時間が遅くなっても、撮れて帰れなかった事は一度もない。
ロケ終了が遅い時は25時、それよりもっと遅くなった事もしばしばありました。
僕は機材を撤収したらタクシーで家に帰れますが、ディレクターはそれからすぐに編集して数時間後には放送しなくてはなりません。
そんな苦労の甲斐あって『昨夜のシンデレラ』は世間の認知度も高くなり、街で撮影していても、
「あ!もしかして昨夜のシンデレラか⁉︎大変やね、兄ちゃんら頑張りや〜」
とお声掛け頂けるまでになりました。
コーナーは終わりましたが、ここでは書き切れないくらい話はまだまだあります。
いつか一緒に頑張ったディレクター、カメラマン達と昨夜のシンデレラの話を肴にして呑みに行けたら面白いかもしれません。
おっと⁉︎つい熱が入り、長々と事象ばかり書いてしまいました。この話を受けての心象は次回、<36.5日目>で書き終わりたいと思います。
ご精読ありがとうございました。